6月末から新型コロナウイルスのワクチン供給をめぐる混乱が報じられています。

西日本新聞などの報道によると、福岡市は6月28日に個別接種に協力を頂いている市内約800のクリニックに対して通知を送り、「直近2週間のうち接種回数が多かった週を『目安』として7月12日以降はその回数を予約数が上回らないようにすること」「8月以降の予約数は目安よりも2〜3割減らすこと」などを求めました。

国からのワクチン供給の目処が立たないことが理由とのことです。

これを受けて、個別接種を担う市内のクリニックでは大きな混乱が生じるとともに、市の対応に対する不満が噴出しています。

そもそも7月末頃は、既に接種が進んでいる65歳以上の方々の1回目と2回目の接種が重なるピークになることが見込まれていた中で、各クリニックでは既に「目安」を上回る予約を受け付けていました。

このため、各クリニックから予約をした方々に対して、事情を説明したうえで、予定の後ろ倒しやキャンセルをお願いする事態が生じています。

今朝の朝日新聞、毎日新聞では全国で同様の問題が起きていることが報じられていました。記事によると大阪市は12日以降、1回目の接種受付を停止。神戸市や千葉市も1回目の受付を停止することを発表したようです。

こうした状況を見ていて、福岡市の対応には大いに問題があると感じます。

各クリニックへの通知はしたのかもしれません。しかし、市が混乱を回避するために速やかに行うべき市民への情報提供や謝罪をした形跡が見られません。報道されている限りでも、大阪市、神戸市、千葉市はちゃんとやっているのに。私も元は報道の現場にいましたので、記事の書きぶりを見ればある程度のことは分かるのですが、メディアが報じている福岡市の混乱は、市の主体的な発表に基づくものではなくメディアが独自に取材して明らかにしたものです。

個別接種に協力頂いている市内のクリニックからは、「市長は接種の会場を増やすことなどは進んで発表しているが、こうして問題が生じたら表には出ずに対応は我々クリニック任せだ。腹立たしい」という厳しいお叱りの声が寄せられました。

会派の他の議員にも、同様の声が寄せられたそうです。クリニックは市から発破をかけられて、どんどん予約を受け付けていたのですから、ワクチンが足りないことの説明を自分たちがしなければならないこと、苦情の矢面に立たされることについては、納得がいかなくて当然です。

接種事業の主体は福岡市です。個別接種に協力頂いているクリニックの関係者には、福岡市がワクチン接種を進めるにあたり、個別接種・集団接種・夜間接種など次々に手を広げ過ぎたがゆえに、混乱が生じたという見方が一定広がっていることを、ひしひしと感じます。高島市長には先頭に立って、事態の収集にあたってもらわなければなりません。

他方、全国的に起きているこうした混乱の根源は、国においてワクチン供給の目処が立たないことがあるようですが、地方自治体がいま独自にできることは、国から既に送られてきたワクチンを「うまく回せているのか」ということを、取り急ぎ検証することではないかと思います。

国から都道府県に送られてきたワクチンは、各市町村に効率的に振り分けられているのか(どこかに過剰なストックがありはしないか)、接種のペースやワクチンの必要量には市町村ごとに差がある中で、県の仲介による自治体間の「融通」の可能性がないのかといったことは、福岡市としても最低限の自助努力として調べてみる、または県に調査をお願いする必要があると思います。

ありとあらゆるワクチンには副反応があります。そのことを理解したうえで、それぞれ覚悟をしながら接種に足を運んで下さる方々の行動は、社会全体の利益(=集団免疫の獲得)のために、自身への一定の不利益を受忍する自己犠牲の精神に裏打ちされたものです。

こうした尊ぶべき善意をあたら無駄にすることは、断じて許されない。今日ここに書いたことは、何らかの形で福岡市に対してしっかりと問題提起をしていこうと考えています。