最近は外信ばかりが気になっています、調たかしです。

香港から極めてショッキングなニュースが入りました。香港立法会(市議会に相当)の民主派議員が全員辞職したとのこと。

報道によると、中国の国会にあたる全人代の常務委員会で11日、香港市当局が特段の審査を必要とせずに、民主派の議員の議員資格を剥奪できることが決議されました。市当局は即日4人の民主派議員の資格を剥奪。これを受けて、「遅かれ早かれ全員が資格を剥奪される」などの理由で、民主派の議員15人が全員辞職したようです。

香港がイギリスから返還されたのは1997年。返還から50年は自治を保障すること、つまり「一国二制度」が維持されることになっていたはずですが、今年6月30日に成立した香港国家安全法を受けて香港は中央政府の支配下に。香港独立をうたった旗を掲げただけの若者が逮捕されるなど言論統制が進み、西側諸国から「香港は死んだ」と評されました。

今回、当局が議員の資格をいつでも剥奪できるとしたことは、亡骸に鞭打つような行為と言えます。香港の立法会の議員は選挙で選ばれていますが、中央政府から見て気に食わない議員はいつでも首にできるというのなら、選挙をしても意味がない。ついに、香港の民主主義は完全に形骸化しました。

アメリカは6月の香港国家安全法の成立に反発して、香港市政府高官の資産凍結などの対抗措置を取っていましたが、大統領選の結果がはっきりしない現在はまさに政治空白の真っ只中で、この隙に乗じたかのような中共の香港支配強化に対して、西側諸国の足並みの揃った対抗措置は望めそうもありません。

香港は好きな街だったんだけどなあ…。前期、小畠議長を筆頭に広州市に姉妹都市交流に訪れた際、帰りがけに香港に立ち寄って、立法会の民主派議員と高齢者福祉の施策について意見交換をしたことがありましたが、日本の国民皆保険制度、介護保険制度に高い関心を持たれ、極めて頭脳明晰な印象に感銘を受けたことを覚えています。今まで3回訪ねたことがあり、再び訪れる機会を楽しみにしていたのですが、残念ながら今はもう、何の魅力も感じなくなりました。民主主義を信奉する市民の落胆、絶望はいかばかりかと思うと、本当に心が痛みます。

15人の議員の欠員はどうなるのか分かりませんが、仮に補選があったとしても、立候補するのはきっと親中派だけでしょう。民主主義社会の一員であった香港の色が赤く塗り替えられていくのを、座して見ていることしかできないことが、もどかしくて仕方ありません…。