今朝の西日本新聞の一面に「緊急事態宣言の延長不可避」との見出しで記事がありました。パッと見た感じ他の新聞社では報道がなかったので、記事にある通り複数の関係者の証言や、一都三県への緊急事態宣言から既に20日近くが経過した今も医療の状況が改善しないことなどを総合して、「勝負した」記事なのだろうなと理解しました。延長は市民生活や地域経済に更なる打撃となるだけに、どうにかして避けたいものです。

地域の個別の事情を言うならば、私がお手伝いをさせて頂いている花みずき通り商店会のプレミアム付き商品券の発売日が2月15日(月)に設定されていて、印刷物等も着々と準備が進んでいるだけに、気が気でないところもあります。ちなみに、仮に宣言が延長されても、商品券の発売所における入場整理の実施など、感染拡大防止策を十二分に取りながら、予定通りに発売することにしています。

さて、きょうは新型コロナウイルス感染症のワクチンの接種について、最近の議論を眺めていて感じることを書きたいと思います。昨日の市長会見では髙島市長が、ワクチンの接種にあたっての優先順位を設定する際、地方の実情に応じた柔軟な対応を取れるように国に求めたことなどを発表したようです。会見については今朝の新聞で各社が報じていたのですが、朝日新聞の記事の終りがけに出てくる写真のような記述、恐らく多くの方には「???」という感じなのではないかと思います。「何で冷凍庫?」しかも「ワクチン専用の?」と。

まずはこの点について、国が昨年末に地方自治体に示した資料(ワクチンの特性PDFファイルが開きます)を基に、解説を試みたいと思います。PDFが開かない方は写真をご覧頂きたいのですが、国の資料から1枚だけを抜粋しました。

今後供給が見込まれるワクチンとして、国は、ファイザー、アストラゼネカ、武田/モデルナの3種類を想定しているようです。このうち今日現在ではファイザーだけが薬事承認の申請を済ませており、実際の供給開始は一番早い見通しです。それが一体いつになるのか、現段階でははっきりしたことは見えませんが、福岡市に関していえば、市長は昨日の会見で、国による手配が想定通りに進む前提で「4か月程度で全市民が2回の接種を受けること」を目標にしたいと述べたようです。

さて、国の資料をもとにワクチンを3種類比較してみて気になるのは、保管温度に大きな差があることです。ファイザーは-75℃での保管が必要。このような低温での保管は、市民が「かかりつけ」にしている地元のクリニックでは到底不可能です。だから先ほどの記事のように「市はワクチン専用の冷凍庫91台を…」という話が出てきます。しかも、大きな会場を押さえて、大規模な集団接種という手法を取らざるを得なくなります。

福岡市の場合はあくまで例示ですが、マリンメッセのような大きな公共施設に足を運んで頂くことになるのではないかと思います。優先的に接種を受けることになるであろう高齢者の方などがどのように移動するのか、様々なことが今後発表されていくと思いますが、見落としがないように、議会の側もよくチェックをしておかなければなりません。

話をワクチンの比較に戻します。-75℃保管のファイザーに対してアストラゼネカは+2℃~8℃とあまり温度を気にすることはなく、武田/モデルナも-20℃前後と、家庭用の冷凍庫の標準(-18℃)よりもちょっと冷やせば保管が可能なため、恐らく両者のワクチンはともに、供給が始まればご近所のクリニックでも接種を受けられるだろうと思います。

※(注)以下、2月8日加筆→【その後に入手した国の資料によると、モデルナのワクチンの保管のためにも専用の冷凍庫が必要になるとのこと。国はファイザー対応で1万台、モデルナ対応で1万台を発注済み。ファイザーと同じくモデルナも集団接種の対応が必要か】

次に気になるのは開封後の保存条件。ファイザーは接種前に生理食塩水で希釈しなければなりません。これに対してアストラゼネカ、武田/モデルナは希釈不要です。どちらの方が手間がかからないか、また、どちらの方がより接種の現場で間違いが起こる恐れが少ないかということは、重要な視点のはずです。

ワクチンについて、最近の政府並びに国会の議論では、「感染拡大防止の切り札」ということが言われているようですが、そもそも目標とされる集団免疫の獲得に「必ず効果がある」とされているわけではないようです。また、あらゆる予防接種には副反応による健康被害が必ず一定数伴うのですが、海外では新型コロナウイルスワクチンの副反応が疑われる事例の動画などが拡散し、大きな不安を広げています。

ワクチン接種については世論の求めもありますし、最近はメディアからの「後手批判」も強まる中で、国における議論もとにかくスピード重視になっているような気がしますが、そんな状況を見るにつけ、かえって「大丈夫なんだろうか!?」という思いがしています。

この段階で「もしも」とか「たられば」を語る意味はあまりないとは思いますが、「もし、これら3種類のワクチンが同時に薬事承認され、供給が始まるとしたら」ということを考えると、まずはじめに選択肢から外れるのがファイザーではないかと思います。扱いの手間が多いだけでなく、冷凍庫も含めて余計な経費がかかりすぎます。しかし現実は、まさに金に糸目はつけない勢いでファイザーを中心に物事が進められているという…。

(注)以下、2月8日加筆→【前掲の通りファイザー製もモデルナ製もともに、専用の冷凍庫が必要である点に変わりはなく、大規模接種会場の設置が必要になる点は共通。また福岡市はもちろん全国の自治体で、大規模接種だけではなく地域のクリニックにおける個別接種を広げるために、医師会との連携をはじめ様々な準備が進められています。】

きょう一部の報道では、我が国でワクチン接種による集団免疫が獲得されるのは、オリンピック後の10月であるとの見通しが紹介されていました。また、世界各国でワクチン接種の進捗には大きな差があり、オリンピックの開催には多くの国が間に合わないだろうという見方も紹介されていました。遅かれ早かれ、決断を迫られる局面が来るのでしょうか…。

ワクチン接種を急がなければならない理由に、オリンピックのことがもし関係しているというのであれば、それは違うよなあと思います。そして私が今の段階で、個人としてはワクチンの接種を受けたくないという気持ちになっているのは、バランス感覚のある議論の過程が見えてこない(基本的にはメディアを通じて国の議論の状況を追っているので、私が情報にたどり着けていないだけかもしれません)からで、このことがかえって、胸の内の不安を大きくしている気がします。あくまで個人の感想です。

さて、話は全く変わるのですが、本日市役所で夕刊各紙をチェックしていましたら、朝日新聞に、知人の写真入りの大きな記事を見つけました。福岡青年会議所(JC)時代の先輩で、モロッコ旅行を専門に扱う旅行社を経営されている女性のこと、コロナ禍で会社が置かれている状況が紹介されていました。海外旅行専門なので、海外との往来が途絶えた昨年の春先以降、本業のお客さんがずっとゼロとのこと。想像を絶する苦境ではないでしょうか。文字が読めるほどの大きさで記事を転載させて頂きます。

このような中でも、何か新たな取り組みをということで、オンラインツアーのサービスを開始するとのこと。体験版のツアーは今月29日の金曜日の夜に500円で参加できるということだったので、私もエントリーさせてもらうことにしました。今の緊急事態宣言下で、ともすれば飲食関連の事業者に関心が集中しますが、やはり時短要請を受けていない事業者にも目を向けた幅広な支援が必要だと改めて確信しました。苦しくても前を向こうと頑張っている市内の事業者さんたちの背中に、そっと手を添えるような福岡市政でありたいと、心から思います。