一昨日(10日)、2月17日に開会する2月議会の補正予算案が手元に届きました。その中に「ジョイントクラス事業」という項目がありました。教育委員会に内容を確認したところ、来年度から、ともに西区の離島にある玄界中学校、小呂中学校の授業の一部を、西区の本土側にある北崎中学校と結んで合同で行うために、必要な物品を購入するための経費などを計上するとのこと。
 リモートを導入するのは、いわゆる実技教科、美術、音楽、技術、家庭、体育のうち、体育を除く4教科です。これらの4教科については、離島の2校の方で特に個別に学習すべき内容がある場合を除いては、3校を結んだ授業を実施するとの説明でした。
 まずは、教育委員会から10日に聞き取った「ジョイントクラス事業」の意図から紹介します。資料には「教育の質の向上及び教員の負担軽減のため、離島の玄界・小呂小中学校と連携校(北崎中)をオンラインでつなぎ、合同授業を実施」とありました。
 具体的な授業のイメージですが、発信元となる北崎中学校の教室にスクリーンを2つ置き、先生が玄界中・小呂中の子どもの様子を見ながら実技教科の授業をする。一方、離島の2校にも大きなスクリーンが2つ置かれ、北崎中の子どもたちと同じ教室で授業を受けているような雰囲気の中で学習ができる、とのこと。
 イメージのできる資料の提供を教育委員会に求めたところ、下のような写真の入った資料が示されました。
 
 中学校に子どもを通わせている親御さんの中でも、「これは面白そうだ」「なかなかいいんじゃないか?」と思う方は少なくないでしょう。
 子どもの数が少ない離島の授業で、他校も含めたより多くの子どもとコミュニケーションを取りながら学習を進めるツールとして、利点もあると思います。
 しかしながら、引っかかる点があるのも事実です。
 まず考えたのは、「もしこれが、我が子が通う学校で今後実施されることだったら、どう感じるだろうか」と。多感な中学生のときに受ける音楽や美術の授業は、情操教育という点でとても重要です。技術や家庭科も、これからの人生をしっかり生きていく上で、非常に大切な技能を身につける機会です。
 これら4教科が子どもの通う学校では「基本的にはリモートになる」ということを言われると、私の場合は間違いなく拒絶するだろうと思います。
 平成17年(2005年)の福岡西方沖地震の際、当時民放記者だった私は被害の大きかった玄界島に泊まり込みながら、島の少年を主人公にしたドキュメンタリー番組を制作しました。そのとき以来のご縁があって、玄界島には今でも友人・知人がいます。島の人たちがどのように受けとめているかを聞こうと思い、昨日(11日)、渡船で島に渡りました。
 番組の主人公だった島の少年は、今は立派に漁師をしているのですが、昨日は彼に紹介してもらって、島のPTA役員の方からお話を聞かせてもらいました。リモートを活用した3校の合同授業の計画そのものをご存じではありませんでした。保護者説明会などは開かれていなかったとのことです。そこで私から計画の内容を説明しました。
 保護者の方は、スクリーン等のリモート機材が子どもの新たな学びの可能性を広げるのではないかということには一定の期待をされながらも、「実技教科から主要教科にまでリモート授業の形式がどんどん広がって、今後、島の学校から先生がいなくなることにつながるのでは!?」という不安を口にされました。
 別の保護者の方も後から加わられたのですが、やはり全く知らなかった話だったようで、びっくりされていました。そして、同じように今後の島の教育についての不安を話されました。
 聞き取りをさせて頂いたご意見は、私なりに整理をし、今日(12日)教育委員会にお伝えしました。①「4教科を基本的にリモートで」という考え方は急進的に過ぎるのではないか、②例えば大人数でのディベートをはじめ、島の教室だけではできない経験を子どもたちにしてもらうなど教育の質や中身を充実させるためのツールとして機材を導入することはよいとしても、4教科をリモート授業にすることが目的化してはいけない、③保護者の中にもし抵抗感があるならば、押しつけと受け止められるような運用は避けるべきであり、丁寧な説明と合意形成を前提にすべき、④リモートの取り組みが、現状で配置されている教職員の削減につながるようなことがあってはならない、など。
 教育委員会の担当者からは、しっかりと話を聞いて頂けたと思っているので、今後、島の方々の不安がぬぐえるような対応を取って頂けるものと期待をしています。
 昨日、島でお話をした保護者の方々は、「漁村留学」の事業に関心を持たれていました。県下の離島では宗像市の地島(じのしま)で盛んに取り組まれています。本土の子どもたちに離島に住み込んで勉強をしてもらう漁村留学は、本土の子どもたちには自然豊かな離島の魅力を感じてもらい、島の子どもたちにはリアルな対人関係を築く機会をもたらします。こうしたリアルな経験こそ、島の親御さんたちの一番の願いなのだと感じました。
 今回、教育委員会からは「離島の教育の質の向上」という視点で、一石が投じられたものと捉えています。この機会に、これまであまり議論が深まってこなかった離島における教育のあり方を、離島振興という視点も併せて、真剣に考える必要があると思います。
 玄界島、小呂島ともに、国が定めた教員の定数を超えた人員を、福岡市教育委員会が独自に予算措置をして、拡充をして配置しています。この人員を今後どのような理念のもとに維持していくのか。今回の補正後にもしリモートの機材を導入するのならば、どのような理念のもとで運用をしていくのか。こうした理念を明文化することを目指し、そしてこの中に、島の親御さんたちが望んでいる漁村留学についても位置付けていくべきだと思います。