ロシアのウクライナ侵攻が始まって50日余りが過ぎました。この間、このブログでも極めて微弱ながら、日本の取るべき立場や経済制裁の方向性、ロシアを中心とする「新枢軸」への警戒感などについて私見を発信してきたのですが、今日は現在のいわゆる「戦後秩序」が限界点を迎えたと感じることについて、書きたいと思います。

国連(国際連合)は第二次世界大戦後の戦後秩序の象徴だと認識しています。対日・独・伊の戦勝国である米・英・仏・ソ連(ロシア)および中国の5大国が安全保障理事会の常任理事国を務め、第三次世界大戦の勃発を防ぐために、軍事侵攻つまりは武力による現状変更を厳しく戒める枠組み「だったはず」でした。

ウクライナのゼレンスキー大統領は5日の国連安保理会合でのオンライン演説で、国連が機能不全に陥っていることを厳しく指摘した上で、「国連を解体する覚悟はあるか」と加盟国に呼びかけました。

私は国際法や国連憲章について無知ではありますが、この指摘には賛同せざるを得ないと思っています。安全保障理事会の常任理事国はそれぞれが拒否権を持っていますが、この拒否権が大きな障壁になり、今回のようにまさか常任理事国自身が軍事侵攻の当事者になってしまえば、安全保障理事会として何も決められないし打つ手がないという事態を招きました。

実は冷戦以降、常任理事国は東西陣営に割れて互いの利害が衝突していたので、それぞれが度々拒否権を発動してきた経緯があります。こうした意味においては国連の機能不全は今に始まった話ではないというべきなのかもしれません。

ならばいっそのこと、ロシアを常任理事国から外してしまえばよいと思うのですが、それすらも拒否権が盾になって不可能なのではないかと思われます。

先述の通り国連は、先の大戦における戦勝国が作った、戦争をしないための枠組みだったのですが、常任理事国であるロシアが自ら戦禍を引き起こしている時点で、この戦後秩序は事実上瓦解(がかい)したと評価すべきだと思うのです。

ゼレンスキー大統領の発言は、分かりやすく言うと「このままなら国連なんか意味ないよね」というもっともな指摘だったと思います。

現在の国連の前身としては、国際連盟がありました。これは第一次世界大戦後の戦後秩序であり、日本も常任理事国を務めていましたが、1933年の脱退以降は日本自身が戦争の当事者にもなったように、戦禍の拡大を止めることはできず、第二次世界大戦が終わったのちに解散されました。

時代は繰り返すということなんでしょうか。

昨今のウクライナ侵攻では、核の抑止力が働くことによって大国同士の直接的な軍事衝突は今のところ避けられてはいるものの、経済制裁や武器供与などの形で西側先進諸国は(我が国も含めて)間接的に参戦していて、世界地図に色をつけてみたら一目瞭然なのですが、世界が大きく二つに割れて睨み合う構図と、現に軍事衝突が起きているウクライナの情勢を加味すれば、第三次世界大戦さながらの様相を呈しています。国連が「戦争を止める」という最も重要な役割を果たせないことが明らかになった今となっては、ウクライナ侵攻の後を見据えた第三の戦後秩序を形成することに向けた議論が必要なのではないでしょうか。

長く国連安保理の非常任理事国を務め、アメリカに次ぐ拠出金の負担も含めて多くの貢献をしてきた我が国としては、こうした議論を先頭に立って提起するくらいの行動を取るべきではないかと思います。ロシア、中国、北朝鮮と海を隔てて接する我が国の周辺環境は言うまでもなく緊張が高まっていますが、これがいざ有事に発展した場合に、今の国連は残念ながら頼りになりません。

自由主義、民主主義の旗を掲げる国々の合議による新たな秩序維持の枠組み作りが急務であるという思いを、最近は日々強くしています。