今年の4月から福岡市では中央区と南区で電動キックボードの実証実験が行われています。

実証実験に参加している事業者が提供する電動キックボードのシェアサービスに限って、ヘルメットの着用を任意とし、いわゆる小型特殊車両のルール(歩道の走行や二段階右折は禁止、制限速度は時速15キロなど)に従って公道を走行できるというものです。

一部の大通りは走行できないほか、エリア外では実験機で走行してはいけないことになっています。

この実証実験について、私は6月議会の一般質問で幾つか厳しい意見を述べました。代表的なものを3つ挙げると

①小型特殊車両の右折ルールは「小回り右折」だが、電動キックボードで実際にやってみたら怖かった

②利用者もそうだが、一般のドライバーに電動キックボードの交通ルールの周知が十分になされていない

③電動キックボードの保管場所として福岡市の道路(歩道)や公共施設の敷地をタダで事業者に占用させているのは道理に合わない

まずは①について。小回り右折とは例えば直進車線と右折レーンがある交差点を右折しようとする際に、右折レーンに入ってからまがる方法です。いわゆる原付バイクの場合は二段階右折をしますが、小型特殊車両のルールが適用される実証実験の電動キックボードは、一般車両と同様に右折レーンから右折するのが基本的な考え方になります。

私は一度、実証実験の機体に試乗をした際、国体道路から市役所方面に小回り右折をしてみました。非常に怖いと感じ、また後続など周囲のドライバーの不快感も伝わってきたので、6月議会の一般質問ではその感想を率直に議場で述べました。

この質問の後に、福岡市で実証実験をしている事業者は小回り右折を禁止し、「一度下りて向きを変えてから横断歩道を押して渡り、渡り終えてから再びキックボードに乗る」という変則的な右折ルールへと変更しました。

②については、①で紹介した試乗の際に一般のドライバーが電動キックボードの利用者をかなり嫌がっている様子(例えば自転車を避けるよりもはるかに大きく膨らんで避けている、など)が見て取れたことや、市民から聞こえて来る声やメディアの報道などからも、よく知らない乗り物(つまり利用ルールが浸透していないので次にどんな動きをするのかが読めない)を怖いと感じたり快く思わない人がかなりいると確信したことから、周知が不足していることを指摘しました。

この質問の後に、市政だよりなどを通じて利用ルールの周知がはかられたようです。どの程度、周知できたかは分かりませんが。

③については書いた通りなのですが、例えば福岡市役所の南側(中央警察署側)敷地内に設置された電動キックボードの保管場所、福岡市美術館の前に設置された保管場所など、福岡市が所有または管理する土地の占用に対して、事業者が市に1円もお金を払っていないということです。

①や②に書いた通りで、電動キックボードのシェア事業には少なからず市民の不評を買うような問題点があります。なぜ事業者に市の施設をタダで貸さなきゃならんのか、全く理解ができません。

比較事例として「電柱」をイメージして頂きたいのですが、電柱は市民生活に欠かせない電気を行き渡らせるためにあちこちに立っています。そして福岡市は市の管理する道路に立っている電柱1本あたり年間2100円以上のお金(占用料)を電力事業者等から取っています。

一方で市民生活に欠かせないものとまでは言えない電動キックボードの事業者からは、占用料を取りません。道理に合わない大盤振る舞いもあるものだなあと。不思議でならないのです。

この点は、6月議会の質問の後も一向に改善されません。「なぜなの?」と尋ねると「一定の公共性があるから」といった回答があるのですが、福岡市はこれまで公共性の有無よりもむしろ、「利用者負担」「受益者負担」などの考え方を軸にしながら、市民からお金(使用料・占用料等)を取ってきたんじゃないのか?と。

「今までやってきたことが何だったのか説明できなくなるから、市は電動キックボードの事業者からお金をちゃんと取るべきだ」というのが私の見解です。

こうした点は改善されないまま、当初は10月末までとされていた実証実験が、なんと来年の7月末まで延長されることになりました。しかも今日からは今までの中央区・南区に加えて、博多区の一部にまでエリアが拡大されたとのこと。

納得がいかないという話を通り越して怒りすら湧きます。大事なことが軽いノリでなし崩しにされてしまうようで、「これでは、いかん」と思いますし、ここは腹を決めて物を申すべき場面かなと思っているところです。

実証実験の延長やエリアの拡大と聞いて、快く思わない市民が一定いるでしょう。そうした方々の目に本稿がとまるかは分かりませんが、少なくとも「快く思ってない議員がいますよ」ということを発信することは、私が担わせて頂いている職責のうちだろうと考えます。