17日に告示された自民党総裁選。新聞・テレビで関連の報道を見ないことがないほどに関心が高まっていますが、ネットも含めて情報を追えば追うほど、4人の候補者が例外なく大なり小なりのネガティブな情報を拡散されていて、どうしても目が止まってしまいます。

中でも気の毒というか悲しくすら感じたのは、ある候補者の身内が元暴力団員だという週刊誌報道。どうやら一部新聞社もこの週刊誌報道に対する本人のコメントを掲載する模様。

私はこのブログで何度も暴追の機運に関する所見を述べてきましたが、誰もが理不尽な暴力に怯えることのない社会の実現のために、まさに社会をあげた暴追の取り組みは推進されるべきだと信じています。

ただ、あらゆる政策的キャンペーンに出口戦略が必要であることも事実で、一方的に締め付けて音をあげさせることが全てではなくカタギの道を一歩踏み出せるような社会環境の整備も同じくらい重要だと思っています。

「あの人は以前、ヤクザだったらしい」ということをもって、その後の人生でずっと後ろ指をさされても当然だというのでは、極道はいつまでたっても退路のない一本道のままなんじゃないかと。

無論、世の中には許し難い罪があり、我が国では司法が「更生の余地なし」と断じた者を絞首台に送っています。しかしそれ以外の者には等しく更生または贖罪の機会が与えられるのが原則論です。

件の候補者に関しては、身内の過去について「虚偽の発言があったかどうか」ということが焦点になっているようですが、仮に週刊誌報道が事実であったにせよ今のご時世だからありのままを発信することが難しいだろうことは察するに余ります。

今日の投稿は、件の候補者に対する個人的な支持を表明する趣旨ではないことを断っておきますが、この候補者は選択的夫婦別姓や同性婚、ジェンダーなどの課題についても現状を改めるスタンスを明確にしています。

自民党が全ての国民とともにある国民政党である所以は、いわゆるマイノリティの心情に寄り添った政治理念を掲げる候補者が、20名もの推薦人を集めて総裁選に打って出ることができるという事実に象徴されているような気がします。この人がもし「身内が元ヤクザだったかどうかなんて関係ないじゃん!」と仮に強弁したとしても、私は非難するどころかそのブレない姿勢に共感するでしょう。それはまさしく貴職が信条とするところのインクルーシブの実践ですよね、と。

他方、今回の総裁選に関しては今までもこのブログで触れてきたように、非常時のリーダー、戦時宰相を選ぶ政治イベントです。困難なコロナ禍の時代を我が国が乗り越えるため、蔓延の防止や根本的な治療法の確立、生活困窮世帯や生活急変世帯への支援も含めた国民生活の再生策、ひいては我が国を取り巻く安全保障上の課題など、まずは多数派・少数派を問わず全ての国民に利害関係のある問題について最適解を示せる強いリーダーを選ばなければならないと思います。

そういう意味では、私が今日触れた「夫婦別姓」「同性婚」などの課題はいずれも真剣な議論が必要ではあるものの、今回の総裁選の争点にはなり得ないものだと思います。私もこれらについてはどちらかというと柔軟な論の側にいますので、1日も早く世の中が平静を取り戻し国民的な議論が深まることを願ってはいるのですが…。