毎週、月曜日と水曜日は、消防団の訓練で汗を流しています、調たかしです。8月に行われる早良消防団の小型ポンプ操法大会に向けて、2番員の指導員をしています。大人の部活動みたいなものでして、体を鍛えるのには最適です。

さて、今日はずっと疑問に思っていた「1票の格差」の問題について書きたいと思います。

衆議院議員の選挙を例に取りますが、A県1区という小選挙区の当日有権者数が10万人、B県1区では30万人だったとします。小選挙区の当選者は1人なので、A県1区の当選者は10万人の代表、B県1区の当選者は30万人の代表者ということに。

ここに3倍の有権者数の開きがありますが、後者は前者に比べると「1票の重みが実質的に3分の1になりはしないか」というのが1票の格差問題です。

憲法14条に定める「法の下の平等」が根拠になっていて、格差が違憲だという司法の判断が下されるかどうかは、「2」を上回るかどうかが焦点になっているようです。

ちなみに昨年10月の総選挙では、1票の格差が最大で2.08倍となり、2倍以上の格差のある選挙区が29あったとのこと。全国各地で、違憲判断と選挙無効を求める訴えが起こされています。

こうした昨年10月の総選挙の状況を受けて、衆議院の定数を10増10減する法改正が実施され、あす6月16日には格差調整のための小選挙区の区割り変更が発表されます。東京都で5増、神奈川県で2増など、大都市を抱える都県で定数増となる反面、福島・滋賀・山口・長崎など人口が減っている10の県では定数減となります。

私がこの問題について、これまでいまいちピンと来なかった理由は、「少数の声」をどう扱うべきかということについて「世の中で明らかなダブルスタンダードがまかり通っている」現状を、どう理解すればよいのかがわからないから。

例えば新聞などの報道を見ると、日頃はさまざまなマイノリティ、少数者の置かれた困難な状況を丹念に取材して、声なき声に社会全体が耳を澄ますべきであることを力説します。私自身、民放記者時代にお世話になった上司から教わったことは「一隅を照らす記者になれ」「困っている人がいたら、それがニュースだ」というものでした。仕事をするフィールドは変わりましたが、今もその教えは大切にしているつもりです。

しかし、こと1票の格差の問題になった途端に、最近の報道は少数者である地方の人々の利益の代弁者(=地方選出の国会議員)が減ることを是とします。もとになるのは「1.98ならセーフだけど2.01ならアウトだ」とかいう、よくわからない数字のロジック。四捨五入すればどっちも2なのに。一体どうしてなんでしょう。

私は幅広く「安全保障」の分野に関心を持っていて、特に最近は国土の防衛(いわゆる安全保障)や国民がいかなる状況においても食べていくこと(食料安全保障)に関して特に危機感をつのらせています。

いわゆる安全保障の視点に立てば無人島を増やしてはいけない(無人島になると国外勢力による不当な占領や実効支配を招く恐れがある)ので離島の振興が大変重要だと思っていますし、食料安全保障の視点では農山漁村の保全に注力すべきだと考えていて、これらに対して国がしっかりとした問題意識をもって予算づけをしてゆくためにも、過疎地を代表する国会議員を減らしてほしくないと考えています。定数が5増する東京の議員が、過疎地の代弁者になってくれればいいのですが、正直に言ってあまりイメージできません。

かといって、国会議員の定数を極端に増やしてバランスを取ろうなどという考えは、およそ大多数の国民の理解や共感を得られないのが今のご時世です。法の下の平等の原則から導かれる「2」という数字にとらわれる限り、過疎地の声は政治に届きにくくなるほかないと言えます。

1票の格差の問題は諸外国にもあるようですが、どうも我が国の捉え方は少し過敏に過ぎないかと感じます。例えばスイスの上院にあたる全州議会は、26ある州のうち20州から2人ずつ、6の準州から1人ずつの代表を出して46人で構成されますが、州ごとの人口は無視しています。最も人口の多いチューリヒ州と、最も少ないアッペンツェル・インナーローデン準州では1票の格差が2017年の段階で39倍だったそうです。だったらスイスの人々は「法の下に平等ではない」のか。そんなことはないでしょう。

今日述べたかったのは、我が国においても様々なマイノリティに対する配慮が進みつつあり、これからも進んでゆくと感じる昨今にあって、なぜかこの1票の格差の議論だけが、マイノリティを置き去りにする方向で進んでいくことに、なんとも言えない「モヤっ」としたものを感じるということです。

本稿を読んで下さった方も同じように「モヤっ」とされたかもしれませんが、あまり数字にとらわれ過ぎない方がいいのではないかなというふうに、私は思っています。むしろ、地方の声が届きにくい政治は国の将来を誤りはしまいか、と考えています。

5年前、私の事務所がある七隈のまちは、まさに1票の格差対策の区割り変更で、福岡2区から3区に編入されました。今朝の読売新聞の一面報道によれば、今回は福岡1区(東区・博多区)のどこかが調整の対象になる模様。

「なんだかなあ」とは思いながらも、どこがどうなるのかはやっぱりとても気になります。