参院選の結果が出ました。自由民主党の大勝は多くの有権者が岸田政権に信任を与えた結果だと思います。他方、ネットでの呼びかけを主にして支持を集めた新しい政党が誕生するなど、耳目を引く動きもありました。

今朝の新聞各紙で大なり小なり触れられていましたが、いわゆる「改憲勢力」は衆参ともに憲法改正の発議に必要な3分の2以上が維持されました。

今回の選挙は支持政党や政治的な信条を抜きに多くの国民が記憶するものとなるのでしょうが、その理由は言うまでもなく、我が国の憲政史上最長の期間にわたって首相を務めた安倍晋三氏が、演説中に凶弾に倒れたことです。今日の持ち回り閣議において、安倍元首相に戦後で4人目となる大勲位菊花章頸飾(我が国の最高勲位)が贈られることが決まりました。吉田茂、佐藤栄作、中曽根康弘という名だたる大宰相に肩を並べることになります。

志半ばで国家国民への奉職の道を絶たれた無念を思わずにはいれませんが、今日は可能な限り感傷に浸らずに、客観的な事実(だと私が主観的に思う事実)に基づいて投稿をしたいと思います。

安倍元首相は、自由民主党の党内でも改憲の実現に並々ならぬ意欲を持っていた政治家の一人です。首相在任中には改憲の私案も発表しました。これは、自主憲法の制定を党是として1955年に結党した自由民主党の党内はもちろん、与野党交えたさまざまな議論を呼びました。

自由民主党の党内議論でそれまでに積み上げられていた改憲の素案を傍目に、私案を世に問うた真意は知るところではありません。ですが、安倍元首相が改憲の実現に向けて本気で一石を投じた宰相であったことは、動かない歴史的な事実だと思います。

翻って今回の参院選。全国で自由民主党の旗の元にこの選挙を戦った候補者、さらには応援した国会議員の多くが、選挙戦の終盤、安倍元首相の急逝を悼むとともに「その遺志を受け継いで」という言葉を目の前の有権者に語りました。

どのように「遺志を受け継ぐ」のか、意図したところはそれぞれあると思います。アベノミクス路線の継承かもしれないし、積極財政論かもしれない。または我が国の防衛力の強化やインド太平洋地域の平和と安定への積極的な関与なのかも。しかしながら、最も多くの党所属候補者や国会議員が意図したことは、憲法改正の早期実現であったろうと私は信じます。

岸田首相は選挙区の大勢が判明した昨夜、メディアの取材に対して、「(憲法改正)発議のための3分の2結集のために努力を続けて、できるだけ早く発議をし、国民投票に結びつけていく」と述べたとのこと。これは是非ともやり遂げて頂きたいと期待します。

安倍元首相が大勲位に叙せられることとなった以上、その存在は我が国の歴史と全ての国民のものであり、いかなる政党の政治利用にも馴染まないというのが筋というべきでしょう。これからの自由民主党は、安倍元首相の名を語らず、あるいはその遺志を語らずに、党是を実現していく気概を持たなければならないのだと思います。

乞い願わくば、国会に奉職する自由民主党の選良諸氏がそれぞれに1955年の結党の精神に立ち返って、かつ、それぞれの信念と使命感のみに基づいて、批判を恐れることなく改憲の発議に邁進されんことを。

日本の国の最高法規を国民的な議論の中で見直すこと。戦後という時代を総括し、真に独立した国家として日本が国際社会と向き合っていくために、いま取りかからなければならないと思います。