安倍晋三元首相が参院選中に銃撃され亡くなったことを受けて、岸田首相はこの秋に国葬を執り行うことを発表しました。その後、メディアやSNSで賛否両論が飛び交っています。

反対意見は大きく分けて「葬儀に税金をつかうことの是非」「実績や政治手法の評価」の2点に集約されるように見受けられます。

日本は思想信条、言論の自由が保障されている国なので、こうした声がなくなることはないでしょう。大切なことは、これから国葬の準備を進める中において、政府が丁寧な説明に務めることだと思います。

銃撃事件からまだ10日しか経っていない中で、安倍晋三元首相の功績について、政府が客観的な事実をまとめて国民に示す機会はまだ得られていないように認識しています。

SNSでは、2つの学校法人が絡んだ問題などを理由にした国葬反対論も目立っていますが「それでも国葬で送らなければならない理由があるのだ」ということを、政府は正面から説明しなければなりません。

個人的には、安倍元首相が日本を取り巻く安全保障環境が厳しくなることを見越して、日米同盟の深化をはじめインド太平洋地域の諸国との連携強化に動き、さまざまな枠組み作りを提唱・主導したことは、後年、歴史の教科書に載るであろう功績だったと思います。批判に晒されながらも平和安全法制を成立させたことも同様です。

これも個人的な感想ですが、安倍元首相の功績は純粋な内政面よりもむしろ外交・防衛の分野において語られるべきものが多いと思っていて、日頃から平和で安全な暮らしを当たり前のように送っている私たち国民にはあまりピンとこない部分があるように思います。

反対意見を持つ人たちには、理解してもらうこと、納得してもらうこと、共感してもらうことの3段階のハードルがあると思いますが、理解という最初の段階をクリアできるように政府が努力する中で、故人がどのような足跡を我が国や周辺地域の平和と安定のために残したのかが、広く国民に知れ渡っていくのだろうと思います。

なお、国葬についての海外の事例ですが、アメリカでは大統領経験者はニクソン氏を除いては全て国葬で送られています。イギリスでも第二次世界大戦下の名宰相・チャーチルが国葬、鉄の女と呼ばれたサッチャー元首相が「準国葬」で送られたそうです。

安倍晋三氏の首相としての在任期間、その間に各国首脳と築いた多くの信頼関係などを考慮すると、政府がこの秋に国葬を執り行うことには何ら無理はないものと感じます。